海洋堂「リボルテックタケヤ 増長天 木調版」

f:id:HueyAndDewey:20121001091301j:image

海洋堂リボルテックタケヤブランドの、明確にシリーズ名があるわけではないのですがいわゆる仏像シリーズのリペイント版製品です。

f:id:HueyAndDewey:20121001091508j:image

「仏像のアクションフィギュア」が初めて発表されたときは、コアな模型ファンより一般層に広く驚きを持って受け入れられたように思います。私事ですが普段はフィギュアに興味ひとつ示さない知人から「阿修羅ないの?」とたずねられたり、先日TV東京系で放送された「カンブリア宮殿」でも竹谷隆之氏と共に紹介されたりでこれが拡散と浸透というものか。

f:id:HueyAndDewey:20121001091933j:image

オリジナルは天平時代の豊かな色彩感覚を再現するカラフルな彩色が施されていましたが、こちらは「木調版」としてシンプルな木彫りの雰囲気。一般のご家庭にインテリアとして配置するにはこちらのほうが落ち着いたものかと。仏壇に納めることには是非が分かれそうですが…

f:id:HueyAndDewey:20121001092325j:image

増長天は仏法を守護する天部四天王のひとりで南方を守護するものと位置づけられます。四天王像は日本では甲冑を纏った武人姿で形作られることが多く、仏教が日本に流入した当時の唐代様式を伝えるのも特徴的。本製品について言えば細かなディティールは彩色版の方が映えるかも知れませんね。

f:id:HueyAndDewey:20121001093231j:image

スミ入れは木肌をイメージさせる色調で古びた色合いは「古色蒼然」のキャッチコピーの通りです。日本の古い仏像としては、例えば新薬師寺の十二神将像に代表されるような、カラフルな色彩が年月を経て剥げ落ちた塑像(粘土像)表現なんかも面白いかと。

f:id:HueyAndDewey:20121001093823j:image

頭部に関しては木調版のほうが造型の美をダイレクトに伝えるようで良いですね。頬や眉間のうねり、盛り上がった眉など表情の隅々から引き締められた力強さが感じられます。仁王像で言う所の吽形のような、溜めの呼吸とパワーです。

f:id:HueyAndDewey:20121001094624j:image

ちなみに背部の光背にもリボジョイントが存在するので可動も取り外しも自由自在。

f:id:HueyAndDewey:20121001094834j:image

軟質素材の使用箇所が多いので、いかつい外見の割に思いのほか可動範囲は広いものです。

f:id:HueyAndDewey:20121001095236j:image

大歌舞伎のように見栄を切ったり。

f:id:HueyAndDewey:20121001095353j:image

武具はいわゆる「独鈷杵」風のものが付属。密教などで用いられる金剛杵は純然たる法具なのですが、元になったのは「ハラディ」と呼ばれる古代インドの刀剣です。まっすぐな柄の両がわに刃がついている短剣で、刃にはまっすぐなものも曲がっているものもあります。2d+4ダメージの武器として扱い、必要体力度は2で必要器用度は4だと「トンネルズ&トロールズ」ルールブックには記載されている(ゲームか!)

f:id:HueyAndDewey:20121001100401j:image

握り手にはなにか物を持たせるための穴が開口されてるものも在りますので、お好きな得物を持たせることも可能です。この辺のオプションは仏像シリーズ共通なんで他の四天王から武器をトレードしても良いんですが、あんまりやり過ぎると誰が誰だかわからなくなるぞ(笑)

仏像を使っていろんなポーズ、シチュエーションを展開しようというのがこのシリーズの一番の売りなんだろうとは思います。実際メーカーサンプル画像でもハイキックする増長天とかありましたし、自由に楽しんでよいのでしょう。でもね、あんまりその、増長し過ぎるのも、どうかなあと危惧しないこともない。いくら一般的な日本人の大部分が「無神論者でぃす」と口では言ってても、例えば北枕は避けるし葬式帰りには塩でお清めするしであんまりこー、「罰が当たる」ような行為は避けるものでして。

お若い方は存じ上げない事かも知れませんが、その昔仏教的な世界観をベースにした「天空戦記シュラト」というアニメがありました。そこそこ評判の良い作品でしたが劇中でキャタクター達が仏具で殴り合ったり必殺技を出すたびに背後に仏像が飛び交ったりと不遜な行為を繰り広げた結果、番組後半では作画が崩壊したりノベライズ刊行が途中で打ち切られたりあまつさえバンダイのプラモがミニ四駆のパチモンだったりと、それはそれはおそろしい仏罰が当たったものでああいま思い出しても((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル…

f:id:HueyAndDewey:20121001101940j:image

でもそんな関係なく「よつんばい」にしてみる。高速道路を時速100kmで追っかけてくるようなイメージでぃす(わらい)やーほら、バチあたりだっつーても四天王ってあくまで「天部」であって菩薩や如来や明王でも無し、ましてや仏陀そのものではない。信仰の対象とはちょっと違う所に位置しているので別にいいんじゃね?という気分。リボルテックタケヤで言えば阿修羅も「八部衆」のひとりで風神・雷神に至っては美術様式はともかく思想信条としては仏教との直接の関係が無いので…

どうもね、かなりそっち方面への配慮はされてるんじゃないでしょうか。お寺関係からクレームついたって話もまず聞きませんし、日本社会では珍しい、企業コンプライアンスと宗教関係について思いを馳せる。

f:id:HueyAndDewey:20121001102917j:image

卍~~~。しまったポーズが逆だった…まーそのしかし、ウルトラ兄弟と並べてドロボンをバラバラにしたりゴモラを真っ二つにしたり、

「仏さまを大切にしないやつは死ぬべきだ」

と、仏教原理主義に基づいて強盗を握りつぶすごっこするなどの楽しい遊び方が推奨されることでしょう。ところでチャイヨープロダクションのキャラクターって日本じゃ誰が版権管理してるんでしょ?

f:id:HueyAndDewey:20121001104057j:image

散々遊び倒した後の祭りですが、本製品には仏教美術の様式に従い邪鬼をモチーフにした台座が付属します。増長天に付属するのは二体を両足でそれぞれ踏みしめる形状の物。

f:id:HueyAndDewey:20121001104413j:image

やはり素直に台座に配置するのがいちばん落ち着いていますか。「仏の住む世界を支える須弥山の4方向を護る四天王の1人として南瑠璃埵(みなみるりた)に住み、南の方角、或いは古代インドの世界観で地球上にあるとされた4つの大陸のうち南贍部洲(なんせんぶしゅう)を守護するとされる」(wikipedia「増長天」項目より引用)とのことですから、お部屋の南側に置くかあるいは南面させるのが、仏さまの教えとしては正しいものと存じます。

f:id:HueyAndDewey:20121001104822j:image

それはそうと「我々にとってはご褒美です」な紳士の嗜みとしては、早急にフロイラインリボルテックを配置するのが正しいテーブルマナーです。

リボ仏像は近日中にもう一点上げる予定なのですが、言いたいことは全部書きつくしちまった気がする…

あわせて読みたい