童友社「1/72 九六式二号艦上戦闘機二型」

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スタジオジブリ映画「風立ちぬ」で今夏話題となっている堀越二郎が九試単戦の次に設計した航空機です。特に映画には出てこないらしいのですが(未見なのでホントのところは知らない)、九試単戦と零式艦上戦闘機をつなぐ重要な環となる機体。


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童友社の1/72スケールエアモデルとしては完全新規のキットは久しぶりです。ボックスサイドには「スライド金型により胴体と垂直尾翼は一体成型、主翼と胴体下面と水平尾翼も一体成型」という「今までにない発想でモデル化されました」とあります。

えっ

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ま、まああんまり深く考えるのはやめて素直にキットを楽しむことにしましょう。ホビーボスの1/72キットも組んだことないしなぁ。

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塗装済み完成品を未組み立ての状態でリリースしたように一体成型の進んだ製品内容ですが、要部はその必要に応じて分割されています。完成品バージョンは実際にどこかのメーカー・ブランドで販売されているのだろうか?

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エンジンカウリング内部も見える範囲でモールドされていますね。

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デカールは二機分、海軍第一二航空隊と海軍第一四航空隊の所属機です。ボックスアートは実機写真のそれもかなりピントのぼやけたものを使用していますが、実際には銀色の機体に赤い尾部が鮮烈に塗り分けられた美しいカラースキームのもの。

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一体成型された胴体部分。飛行機モデル特有の胴体中央部の合わせ目処理を省けるのは、組み立てのハードルを大幅に下げるものでしょう。

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主翼部分もあらかじめ上反角がきれいに決まっていて、どなたでも機体全体を美しいアウトラインで組み上げることが出来ます。初心者や入門者には最適、けれどベテランの方々には物足りないかもしれません。組み立て時間を短縮してその分塗装に拘れる設計だとも、言えますけれど。

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パネルラインは最近の1/72エアモデルとしては標準的なライン取り、補助翼の羽布表現も十分なものです。主翼中央桁部あたりに若干、ごくわずかヒケてる面があるようですが、なあにかえって当時の日本機らしいって言ったら怒られるかなー。

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コックピットはさすがに一時代前のレベルにとどまっています。機体を一体成型しているおかげで内部構造が再現できなくなるのは仕方が無いところではありますが、開放式コックピットで目立つ個所でもありますし、どこぞからパイロットフィギュアを調達した上でざっくり輪切りにするのも…グロいかなそれは……

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パーツの合いはさほど悪くは無いのですが、実際のパネルラインとは異なる位置の分割線が、微妙に気になる人もいそうではある。なんかこー、奥歯に挟まったニラが取れないような種類のモヤモヤ感はあります。

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位置取りよりもメリハリの問題かなあうーむ。

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でもやっぱり「簡単に組み立てられること」が一番の特徴でそこを楽しむべきでしょう。細けぇことは気にするな!バーッと組んでダーッと塗ってドーンと飾ればいいんだからと、プラモデル趣味にはそういうスタイルも在っていいんだよなってなことを思わされました。

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この世代の飛行機(戦闘機)にどこかのどかな空気を感じるのは、零戦や隼など太平洋戦争真っ最中の機体と比べてなんだか主翼のラインが柔らかいように見えるからかな?日本の近代画家北脇昇に「飛行場」という作品があって、カエデの種子を飛行機に見立てた面白いものだったなーとああ、全然関係ない話ですねこれ(汗)

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ジブリの映画で堀越二郎に興味がわいたひとにこそ、手軽に作ってもらいたいようなプラモデルです。ご本人も「零戦よりも会心の作であった」と述べられているのであの映画の中で主人公が目指している「美しさ」の帰結って零戦じゃなくてむしろ雷電か烈風なんじゃないかな?どっちも美しい飛行機だよね!(映画を知らないので本当にテキトーなことを書いている)

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同じ1/72スケール、ファインモールドの零戦二二型と並べてみると、やはりいろいろと違いが見てとれるものです。九六艦戦の主翼上反角が途中から持ちあげられるような処置になっているのは(固定式の主脚を支える構造上の必要もあるのでしょうが)逆ガル式であった九試単戦の主翼からの流れを感じるものです。

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いわゆるレイザーバックとファストバックの違いはありながらも、尾部に向けて絞られていく胴体の外形は非常に似通った設計が見られます。完全なifですがもしも零戦のボディをレイザーバックにしてみたら、「スーパー九六艦戦」みたいなヒコーキになるんだろうか。

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上から見れば主翼・尾翼とも平面形状が全く異なる形状で、この二機種やはり似て非なるものと言えましょうか。翼の形が違ってくれば、必ず飛び方も変わってくるものですからして、やはりファインモールド鈴木社長の

「零戦と九試単戦はそっくりなんです」

「ウソだと思うなら、この九試単戦を引き込み脚にして、零戦の風防を被せた姿を想像してみればいいんです」

という言葉には、雛見沢的反応をせざるを得ない(笑)

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このように「風立ちぬ」がらみで零戦と比較するのは、本来ならば映画公開と併せて発売されるモデルグラフィックス9月号に付属予定だった九試単戦マガジンキットでやってみる予定でした。しかし何故だかこのキットの発売は11月25日発売のあー来年の1月号になるのか、そこまでズレ混むのだそうで。事前から開発は進められていた筈なのに何があったのか本当のところはわかりません。しかしこの時期を逃すのはやはり残念な話ではある。そこで少し考えてみた。

スタジオジブリの映画「風立ちぬ」は実在の堀越二郎の生涯を基盤に、堀辰雄の同名小説「風立ちぬ」の設定を折り込んだフィクション作品です。そこにもうひとつ、同じタイトルの別作品を加えてみたらどうだろう。

そう、松田聖子の歌だ。

「か~ぜ~たち~ぬ~ い~ま~は~あき~♪」

だから11月なんだよ!!!

(11月25日発売ならもう冬だろうという指摘は、この際風に流す)

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