ARK MODELS 「1/35 ソビエト 火炎放射重戦車 KV-8」

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原始人フィギュアでは定評のあるアークモデルによる第二次大戦ソ連重戦車のインジェクションキットです。


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アークモデルの軍用車両キットは第二次大戦の東部戦線アイテムを中心としたラインナップで展開されているのですが、ご存じの通りこれらは以前にアランホビーやイースタンエクスプレスなどの現在は活動を休止したメーカーから発売されていたもの。本製品も元々は旧イースタンエクスプレス社の製品です。

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新製品当時に聞こえた声は「ロシア・東欧製品にしてはそれほど悪くない出来」という中程度の評価だったかと思いますが、ズベズダやICMなど各社とも製品グレードの進捗著しい現在にあっては相対的に低下していると言わざるを得ません…

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インジェクションキットとしてはユニークなアイテムも多くこのKV-8も当時は「これしかない」希少価値があったものですが、現在では後発他社からもっと洗練されたキットが出ているので市場の競争力も以前ほどにはないでしょう。とはいえトランペッターのKV-8はすでに絶版、まず見かけないアイテムなのでひとまわりして「これしかない」立場に返り咲きそうな気もします(笑)

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そのあたりの事情を知らずに開封すると大味な製品に思えるかも知れませんが、昔を知ってる人間からならやっぱり大味に見えることは変わらん。この風、このにおい、これこそロシアって感じ(旧ソ連時代の1/30スケール戦車プラモを知ってるような古老の方にはまた違って見えるかもしれません)

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大味な印象を与える転輪関係のランナーがごっちゃり4枚も入ってるんでますます胸焼けしそうなものではあり。なんでこんなに増えるかといえばひとつの金型で2アイテム分の製品をリリース出来るよう、2種類の転輪が入ってるんですな。つまりまるまる一両分余る、えー、2種類の転輪を自由に選択できる自由度の高いキットです。実際二次大戦の戦場でも自由に混在して使用している例も見られますし自由万歳、ソ連は労働者の天国だ!だいたいそんな感じ。

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キャタピラはベルト式で良かった。このパーツ精度で連結式だと軽く死ねる。むかしひとからもらったテクモドのT50軽戦車の箱開けたときには呆然としたもので、いまでもずっと呆然としています。あれはミラージュから出ているのか今は。

さて当時としてあまり状態のよくなかったプラモデルが、ではメーカー移籍で金型調整など改善されているのかといえば……

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旧メーカー刻印がそのまま残っていたりするんでなんにも変わっていないものと推察されます(汗)なんだか墓石のような画像でありガクブル。それとデカールやエッチングは特に含まれていませんでしたが、旧イースタンの頃はデカールは入ってたように思います。少なくともKV-1の「容赦せず」号は入ってたましたが、はてKV-8はどうであったろうか……

なんだか最初からダメ出しばかりのようなアークモデルのKV-8ですが、しかしこのキットを構成している大事な要素が3つあります。「3つのや」と言えば今流行りのいわゆるアベノミクス政策に期待した仕手筋や投機資金の流入によって一時的に円安と株価値上げが高まる効果通称「アベノミクス効果」みたいですが、ともかく3つのやなんである。

そのいち:やすい

なにしろ最近の戦車模型はどんどん高価格化が強まりオマケにこの先輸入品は円安基調のおかげで実質値上げが心配される中にあって重戦車でも定価3000円弱というこのお値段は実にミリキ的です。

そのに:やたらとてまがかかる

しげの秀一「バリバリ伝説」という伝説的なバイク漫画がありますがこのキットも実にバリバリです、手間掛ります。逆に考えるんだ、それだけ長い時間模型趣味に浸っていられていいなって考えるんだ。そんなこと言ってるからジョースター家の人間は短命なんですよ。

そのさん:やわらかい

これが一番大事です。プラスチックの素材が柔らかいのでカッターやドリルによる切削加工がサクサク進みます。信頼できる統計数値を見たことがありませんが、モデラーの中に一定数存在する「夜中にデザインナイフでカンナがけしていると倒錯的な幸福感を得られる」人々には福音のようなプラモデルですね!

…どっちかと言うとそれは「3つの嫌」ではないかと思った人、ちょっとそこの壁際に立って下さい。ロシア的に解決しましょう。

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さて組んで行く訳ですが、A4コピー用紙2枚にただ両面印刷されただけみたいな取り説の手順は多少無視して進めた方が良いかと思われます。車体の箱組みから始めるのは手順通りでありますが、まずはここをしっかり組んで接着剤の固定を待ち、

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それを待つ間に砲塔も進めていきましょう。車体・砲塔とも垂直の歪みや取り付けガイドのズレが大きいのでそこの修正が主な作業となります。砲塔は取り付けピン切り飛ばして面で合わせた方が良かった……

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車体上面はこまかな装備品を先に取り付ける指示がありますがそんなものは一切無視して下部とがっちり接着、四角い受けに四角いダボを合わせて取り付け角度の一致を図るサスペンションアームはそんなの合う訳が無いので慎重に仮組みして様子を見ます。いやホント合わないんだここは。笑っちゃうぐらいに(笑)

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四角いダボを丸くするような気持ちでガリガリ切削していきます。ここに限らず切削加工ってアイマス曲の「団結」を鼻歌しながらあずささんを千早さんにするようなイメージで進めるとどんどん平らになってよいぞ。表に出ろ。

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砲塔もだんだん形になっていきます。平面部分の大きなヒケはいっそプラ板貼って削った方が手が早く、合わないものが合うようになるのはこの手のキットの楽しみのひとつですねって物は言い様を地で行くような記述だな。ちなみに横に転がっているランナーの切れ端のようなものはこれが主砲の砲身で

すいませんちょっと魂が流刑になってました。えーとこのキット、同社のKV-1と金型を共用していて転輪以外に防盾もKV-8用とKV-1用の2種類が入ってます(ランナー画像をよく見ればお解りかと)しかしながら主砲砲身はKV-1用の一本しかないのでそれをKV-8用に切断せよと、特に何のガイドも無く目見当でやれとおそロシアな指示が……

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幸い手元にタミヤのBT-7砲塔があったので砲耳部分で位置を合わせて切断します。最後は結局目見当になるんだけどな(笑)

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やわらか素材なので砲口を開口するのは比較的容易な作業、また砲身先端の保護環にはプラペーパーを巻きつけときました。こんな作業が必要になるのは火炎放射重戦車KV-8が自衛用に軽戦車と同じ45ミリ戦車砲を持ち、且つそれが察知されないように通常の76ミリ砲と同じスリーブを装備しているというちょっと変わった構造をなしているからで、アベールの金属砲身はそれをよく再現しています。

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ようやっとで車体分部分の装備品も盛りつけていきます。言い忘れていましたがこのキット、取り説の指示と実際のパーツNo.がまったく一致しないので主に形を見ながら現物合わせで進める以外にありません。十年ぐらい前の模型雑誌にはイースタン時代の作例記事があったりしますから、それらを探せば参考となるでしょう。

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簡単に組めるアイテムではありませんが要求される作業自体は基本的なことなので、上級者というよりは「求道者」向けとでもいいましょうか、ちょっとキツい道を辿ってスキルアップを計ってみたい方には良いかも知れん。フェンダー上の雑具箱と選択式になっている円筒形燃料タンクのパーツが影も形も見当たらないとか、スリル満点な登山道って感じだ(w

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ラバーキャタピラは瞬着しか効きません。いっそ強引にホチキス止めして塗装や汚し素材で隠した方が早いかもだ。カステンやフリウルなどの可動履帯に置き換えるのもよいでしょう。最近のお高いにキットに高額なアフターパーツを合わせるのは何かと大変ですが、そんな時にこそこのキットの「やすい」特性が活きてくる…ことになるのか……

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なんだかんだでカタチにはなりました。古くからソ連軍は火炎放射戦車の開発に力を入れていた国で、第二次大戦以前から様々な車種を実戦投入しています。射程の短い兵器で固定目標を攻撃する火炎放射戦車の特性には、T-26軽戦車やT-34中戦車をベースにした車両より機動性が低くとも装甲の厚いKV-1重戦車をベースにした本車の方が合致していたはずです。

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その割に生産数が少なく活躍した話も全く聞かないのはなんでだろう。戦争後半のソ連軍が攻勢転換した時期には、固定陣地攻撃には火炎放射戦車の近接攻撃より遠距離から大口径榴弾でぶっ飛ばした方が早いと戦術転換されていたから…とか?IS系列には無いですよねこの手の車両は。

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とまあ、実車的にも模型的にもいろいろと存在感の希薄な車両なのですけれど、図体の割に備砲の小さなKV-1の特性がさらに強調されたような短砲身のシルエットはこれでこれでカワイイものであります。タグのパーツだけあって本体が無い牽引ワイヤーは別途用意すればいいけれど、砲塔上面の対空機銃は機銃架含めてあまり使用されてる例を見ないのでそこは漢(ヲトコ)らしくオミットだ。

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出来に関しては後発のトランペッターの方が圧倒的に上でオススメなのですが、現在入手難ということもあるので「俺にはこれしかないんだ、だからこれが最高なんだ!」と松本零士の「ザ・コックピット」の例のコマを思いながら組んで行くのも悪くないでしょう。

 

 

 

  

 

 

 

 

 

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現在はともかく将来的にはトランペッターがKV-8Sの発売を予定していていやあれはS型ベースだから!ちょっと違うから!!とあまり大きな声では言えないので地下水道から小声で言っておきます。ロシアと言うよりポーランド的である。

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