J-Tank「J-Tank Vol. 016 」

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※都合により書評記事が三回連続してます。そういう時もあります。

日本軍戦車・軍用車両研究誌として一連の私家版軍事本の中でも硬派で知られるJ-Tankが今回は表紙をピンク色にして「ガールズ&パンツァー 勝手に応援號」と題した内容です。

昨年末のコミックマーケットで頒布されるや否や大好評、噂では某タイガーホールさんでも即日完売だったとか……。現在はHLJも品切れ取り寄せ状態ではありますが、表紙スキャン画像からもお判りの通りにサンプルで戴いた見本誌を使ってのレビューとなります。なぜそこまでするかって言えばその、

自分も勝手に応援したくなったからであります∠(゚Д゚)

ガルパンをきっかけに多くの方が戦車に、とりわけ旧日本軍の戦車に興味や関心を持ってくれれば一日本戦車好きとしては喜ばしい限りなのですよう。

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本文巻頭はガールズ&パンツァー主人公、「西住みほ」のキャラクターの由来となった実在の人物西住小次郎中尉とその愛車である八九式中戦車を取り上げた内容です。戦車第一連隊の未公開写真はその資料的価値もさることながら、鉄道輸送の光景や乗員自らの手による戦車整備のひとコマなどはそれらをもとにした「ガルパン」二次創作のソースとなり得るのではないか…なんてことを思ったり。

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夏場の整備なんて上半身もろ肌脱ぎですからバレー部メンバーのこんな様子をイラストに起こしたら薄い本がさぞや熱くなりますz

( #゚д゚)=○)゚Д)バーン!!

…失礼しました、ガルパンはそーゆーのがないから安心して見ていられる作品なのでした。

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西住戦車長の生涯、その人となりについても簡潔ながら的確にまとめられています。戦時中の賛美と戦後の反動としての否定と、両極端にも分かれるこれまでの人物評はどちらも「作家」の手が加わったものであり、資料に基づいた冷静な分析や実像に即した記述、研究者からの視点はここからが端緒となるのかも知れません。(余談ですが光人社刊「戦車隊よもやま物語」では一章を設けて西住戦車長についての記載があります。元戦車第一連隊寺本弘氏の文章は当事者からの視点で、これも大事です)

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上原謙主演映画「西住戦車長」解説は菊池寛の原作小説や公開当時のチラシ、パンフレットの写真も収録しつつ中国ロケなど撮影時のエピソードにもふれられています。現在映像ソフトが廃版なのが惜しまれる所で、これを機会にバ○ダイビ○ュアルが復刻してくれないかしら…ガルパン本編の「みほ」ネーミングも3話でやってた「戦車から降りて河の様子を調べる」も、元になったネタやエピソードがこの映画に入ってたりするものでして。

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ガルパン応援とは直接関係のない記事も、いつものJ-Tankと同様硬派で濃い内容が続きます。新砲塔九七式としてよく雑誌になどにも掲載されている、ルソン島で擱座した戦車第二師団の車両写真の有名な一枚をトリミング前で見ると遠景に「九七式砲運搬車」が捉えられていると知ってビックリ。砲運搬車が実戦で運用されてたところって(個人的には)初見なのです。立体化もまず聞いたことが無い装備ですけれど、形にしたら面白いかもです。

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「上海の戦跡を訪ねて」は当時写真と現在の様子を重ね合わせる興味深いものです。大日本絵画の「上海海軍特別陸戦隊 写真集」を補完するような意味合いもあるのかな?昔はモデグラ別冊で「パンツアーズ・イン・ノルマンディ」とか「バルジの戦い」とかThen and Now の書籍があったのを思い出して、ちょっと懐かしいスタイル。

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「第一戦車隊」設立初期のポートレイトでは襟元に戦車を模した徽章が光ります。新進気鋭の部隊を示すかのようなアクセサリーは後年では廃止されたなかなかに洒落た小物でレイヤーの皆さん、コスプレするなら昭五式です。もちろん女性に向けた話で女性詰襟胸元ばいんばいんってのが如何にもガールズ&ぱn

( #゚д゚)=○)゚Д)バーン!!

…失礼しました、ここはおれのがんぼうをかくところじゃないのだ(棒)

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模型関連では発売予定されているアリクイさんチーム仕様を念頭にファインモールドの三式中戦車製作ガイドとバレー部仕様八九式製作記事が掲載されています。特に後者は日頃J-Tank内でも有数に固い筆致の文章を執筆されている新日本機甲さんが実にこう、ガルパンにメロメロになっている様子が本文からも明らかで読んでいて楽しい内容、愛のある作例って素敵です。キット取説に即したSTEPごとの解説は、この八九式で始めて戦車模型を作る方にも適切なアドバイスとなってます。実際ファインモールドの八九式ってガルパン抜きにしても入門者に安心して薦められるキット内容でもあり。

しかしポン師殿はボークスのキャラグミン製作されていたのか…。編集当局に銃後の声を届けたら掲載の道は開けるでしょうか無理でしょうか。

ブログのボリュームの関係からここで取り上げていない記事も多々あり、勿論そこにも豊かな情報内容が溢れたJ-Tank16号、いつになく多方面に向けて好評発売中です。

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