Meng Model「1/35 VsKfz 617 ミーネンロイマー」(その2)

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ミーネンロイマー短期集中連載第二回、便宜上「レビュー」カテゴリにしていますが今回 MENG のキットについてはほとんどふれてません(えー

前回駆け足のまま「キット内容はこんなもんです」だけで済ませてしまいましたが、果たしてこの「ミーネンロイマー」、その辺りってどこまで知られているのかちょっと心配になりました。知ってる人間ならひと目見るだけで「ミーネンwwwロイマーwwww」と草を生やせる車両ですけど、知らないひとにとっては「そもそもどっちが前なのコレ(´・ω・`)」レベルで判らないかも知れないなー。

ミーネンロイマーとは何ぞや。

「Wikipedia で調べればいいんじゃないかな」

…しかしそれでは原稿になりませんがな。

アルケット社製“重地雷処理戦車”いわゆるミーネンロイマーは第二次世界大戦中にドイツ軍が試作した装甲作業機械です。同時期に競作されたクルップ社製ミーネンロイマーパンツァー(前後連結式の大型四輪地雷処理車両)と違ってこの車両は長らく知られざる存在でした。ドイツ国内ですら資料が残されていなかった本車が陽の目を見たのは1991年前後、ソビエト連邦の崩壊とクビンカ戦車博物館が一般公開されたことによるものです。

冷戦時代ソビエト陸軍の研究施設として世界各国、各時代の装甲車両を教材として保管していたクビンカ博物館には、当地にしか現存していない貴重な車両が数多く存在します。マウス超重戦車やカール自走臼砲など現存するとは思われなかった車両は話題を呼びましたが、それまでは存在すら知られていなかったミーネンロイマーには驚愕と絶句と「ドイツの科学は世界一」などの称賛が浴びせられ…いや、だいたい合ってますよ?西側の軍事関係者が数多くクビンカ詣でを行い「戦車マガジン」を始めとする雑誌にフォトが掲載されましたが、とりわけモデラー寄りの視点からレポート記事が作成されたのは日本AFV模型愛好家協会 JAMES 発行の「JAMES NEWS LETTER」1993年夏号でしょう。

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今は亡き上野の「MGショップ」で無料配布されていたフリーペーパー。いやね、探してみたら出て来たんで是非これ紹介したいなと思いましてね。物持ちいいなあ、自分。

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クビンカに展示されている実車の観察で得られた知見や掲示板に記されているスペックが紹介されています。各部のサイズも実際にメジャーを当てて計測し、記事の目玉として1/35スケールの図面が掲載されています。

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クビンカに掲示されている本車のスペックと洋書「Wheel&Tracks」誌に掲載されたシュピールベルガー氏による解説記事とで異同が見られることも記事内で指摘されています。例えばクビンカのパネルでは本車の重量を38tと表示していますがシュピールベルガー記事では55tであったりと、本車の正確な情報は現在でも不足しているのが実情なのです。

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この図面をもとに著名なAFVモデラー、トニー・グリーンランド氏によってスクラッチされたミーネンロイマーの記事がホビージャパン刊行のミリタリー・モデリング・マニュアルVol.3に掲載されています(1994年)

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この作品は「アーマー・アクセサリー」社ブランドでレジンキット化されました。90年代末~00年代初頭ぐらいに都内の戦車模型専門店の高額商品ガラスケース内に鎮座していた姿を見た記憶があります。いまでも在庫してる所があるかも知れません…

かたちは非常にユニークで、戦車に興味の無い方にもアピールする立体ではありますが、さすがにフルレジンではなかなか手が出せません。車体パーツなんて鈍器ですよ鈍器。

ところがどっこい、ポーランドのRPM社はこのゲテモノ車両をインジェクション・プラスチックモデル化するという暴挙に打って出たのです。

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アーマーモデリング誌2003年1月号掲載「金子辰也のNEW KIT ON BASE」第九回、“MINE FIELD”。本連載は毎月発売される新作キットをストレート組み・ディオラマ仕立てで掲載していくスタイルなのですが、この回では「組み立て説明書どおりに作ってもそのとおりには組めず、アレンジが必要になってくる」「今回に限ってはストレートでは組み立てられず、ちょっと手を加えさせていただきました」とソフトな語り口ながらかなり難渋した様子が伺えます。この時期はまだ東欧プラモデルが難行苦行の同義語だった時代ですね…

決して手放しでは褒められないRPM社のミーネンロイマーですが、インジェクション化はこれが初めてだったので大勢の人が実際に手にとり製作されています。Web上でも素晴らしい完成品の数々を目にすることが出来ます。

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アーマーモデリング2003年2月号では「動く戦車模型オフ会」の盛況がリポートされていますがそのなかに「ひのき」さん製作によるRCミーネンロイマーの写真がありました。

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静岡ホビーショーの合同モデラーズ展示会で目撃したのはまさにこの作例でありました。前後左右のみならずジタバタ足掻いて地雷処理の模様を再現したスグレモノ。内部のメカニクスにも注目の本作は「ひのきの模型工房」サイト上で動画公開されています。どんなカタチより動かしてこそ魅力を発揮する車両かも知れないな。

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その存在を世に知られてはや20年、ソビエトを知らずに生まれた方々が成人を迎えるこの年に、漸くにして誰にでも気軽に手にとれるミーネンロイマーのインジェクションキット化は実に喜ばしいことです。それを踏まえて、ちょっとだけ苦言を呈したいのですが、製品名にもなっている「Vskfz617」って特殊車両番号は確かにクビンカに保管されている実車の銘板に記載されているナンバーなのですが、

Vskfz.617.Nr9537 Berlin―Mar.との刻印があることから、マリーエンフェルトで作られたI号戦車A型の砲塔の流用であると特定できるという。氏の綿密な考証に脱帽する。なお。操縦席を含めて車体には銘板は見当たらなかった。

「JAMES NEWS LETTER」1993年夏号記事より。

つまりそれって単に流用パーツのナンバーが残ってただけですから!とゆー、

なんとも残念なオハナシなのです。

どうしよう、公式な製品名だぜコレ?

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