ニチモ「30cmシリーズ 高速戦艦 霧島」

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「30cm」というサイズは子供にとってはひとつの「間合い」で、実に手になじむ大きさでありましたこのニチモの30cmシリーズ、現在でこそ共通印刷パッケージになってはいますが、全盛期には模型屋の棚の一翼を占める大きなボックス(むかしのプラモは今よりずっと小さな商品が多かったのだ)に迫力あるパッケージ画で一世を風靡したものです。現在でもボックスサイドのシールにその名残は見て取れます。

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大昔には自分もこのシリーズで航空母艦翔鶴を作った記憶が確かにあります。刷り込みはやけに強烈で、いまでも日本の空母と聞いてまず浮かぶのは翔鶴だな。印刷パッケージにある日本艦ラインナップ見ると色々微妙で(例えば空母では赤城も飛龍もない)、まず流用ありきで作られたシリーズだったんだなァ…

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このシリーズのシンボルともいえるアバウト30cm長の船体パーツ。縮尺ではなく物の大きさで統一感を生みだす「箱スケール」の系統です。いまでこそあまり見られませんが、例えばバンダイの1/144ガンダムだって元はといえば「ベストメカコレクション」のフォーマットでした。

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パーツはかなりの省略化が図られたものですけれど、それだけに組み立て易く壊れにくい。入門者・年少者向けキットとしてはこれでひとつの正解ではあります。タミヤの初期MMとかね。

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もう1ランナー入ってて…と、よく見ればこれ一枚の長いランナーを箱のサイズに合わせて切断している。ニッパーの切り口に、人の手作業のぬくもりを感じてください。

いやほら、今の目で見て問題点をあげつらうのは簡単ですよ?でもそれってなんだか自分のお祖父さんを悪く言うみたいで嫌なんですようむうむ。

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モーターライズ前提のモデルならではの動力部。配線ではなく接点金具による回路構成はミニ四駆などと同様誰でも作れる設計です。(モーター/電池は別売り)

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むかしは入ってなかったはずの「マルチ台座」パーツ。「To Heart」のマルチを乗せる台座ではない。(雪が降ったので冗談も寒い)

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さすがに古~いプラモデルなのでバリとかいろいろ大変です。それでも甲板モールドやパラベーン、三連装機関砲などがモールドされていて、やっぱり「実感」は高いと思う。

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煙突部分など頑張ってるよなーと思わされるのは艦船模型では老舗のニチモならではでしょうか。なにか参考にならんかと日本模型のメーカー公式サイトをのぞいてみたら老舗というかなんというか、とにかく懐かしい気分にはなりましたが…いやしかし、イマドキMIDI音源って(汗)

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トラス構造部分にもここがトラス構造であるとはっきり判るようになっている。そういう意味では手抜きなく軍艦の作りというものを理解させるようなプラモデルではあります。

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でも金剛榛名比叡霧島の四隻を、全部共通パーツで立体化しちゃうのはいくらなんでも乱暴だと思います(苦笑)そりゃ共通印刷でパッケージングしちゃうわけでは…あるのでしょうが…

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組み立てはホント、簡単なものです。小学校低学年の方でもウォーターラインシリーズより手軽に組めて、プレイバリューは高い。レバーを倒すと通電する仕組みも非常に組み立て易い。そして、

*プロペラ回転機能つきですが防水機能はありません。スイッチ部やシャフト部その他各自で走行目的にあった防水をしてください。

などと恐ろしい一文が説明書に。伊達に「日本で一番池や沼に沈んだプラモデル」と呼ばれてるわけではないのだ!

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特に浮力を講じる対策が施されてるわけではないので、実際にモーターライズで航走させようと思ったら発泡スチロールなど封入されるべきでしょう。またパーツ構成が単純で内部空間にも余裕があるので、市販の船舶RCから内部メカを流用するには都合がよいともっぱらのウワサ。

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モーターの出力軸とスクリューシャフトはゴムパイプで繋ぐようになってます。そして画面右側の四角いジャングルこそ悪名高いグリースボックスである。

・グリースボックスには、ポマードやソフトマーガリン、グリースなどをつめこみます。

当時の小学生建艦人にとって最も手軽に入手出来たのは冷蔵庫の中に収められていたマーガリンである。可塑性も高く容易に充填が可能、且つ少々抜き取ってもまず発覚しない点でもマーガリンは利用頻度の高い貴重な戦略物資であった。

しかし、マーガリンは常温で溶解する植物性脂肪である。

この「マーガリンを入れろ」という指示が入手のし易さから出されたものなのか、それとも意図的な浸水と沈没を誘発せしめて次なる新造艦艇を購入させようとするメーカー側の陰謀であったのか、未だに判然としない。風呂桶を油膜だらけにして戦略的ゲンコツを受けた海軍関係者は枚挙に暇があるまい。

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スクリューもゴムパイプの輪切りで船底と接続される。いつか知らないうちに抜け落ちそうな気がする…

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艦橋はひとつひとつのフロアを重ねていく、実艦同様の構造。その中央には金剛型の特徴である三本マストがしっかり通っているのでちゃんと仮組してクリアランスを出しましょー。組み立てながら軍艦の構造や仕組みを理解できる、よい設計だと思います。

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やっぱり軍艦、特に戦艦って「城」だなーと思うのですよ。そしてパーツリストにはそれぞれのパーツが一体どんなものなのか、ちゃんと名前が記してあって嬉しいところです。

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大砲乗せるといろいろみなぎってくる。なんだかアイアンロックスみたいですよ!(例えがヘン)

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しかしこのキット最大の問題点は副砲の数が全然足りてないことです。金剛型戦艦には左右両舷あわせて16か所の15cm副砲用砲郭が存在しキットの船体もそのようになっているのですが、肝心の副砲は10個しかないのです…

幸い霧島は第一次改装以降副砲の門数を14に減らされているので他の艦に比べれば若干マシな状況ですが、いやそれでもやっぱりこれはどうよと。あー「金剛」と「榛名」のレイテ沖海戦仕様ならこの数で済むのか。なるほどしかしううううむ。

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複雑な気持ちを抱きつつ船体上下をパチリと。接着せずとも十分タイトなおかげでうっかりスイッチを外に出し忘れても容易に修正が可能だって馬鹿だなー、俺。

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結局右舷のみ副砲門数を合わせることにしていちおうの完成。左舷は弾幕薄くてもよし。

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なにしろ左舷にはスイッチが屹立しているもんで、あんまりこっち側は見せないほーがよろしかろーと。

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そしてこれがマルチ台座である。なにがマルチかと言えば逆さにすれば船腹の広い艦にも使用可能と、そこがマルチ…か…

このシリーズ大和型とかニミッツ級とかありますからねえ。シリーズといえばアイオワ級フェーズIIなんて計画案がプラモになってたのはニチモの30cmシリーズだけじゃなかろうか。全然見かけないけどカタチは面白いから復刻してくれないものでしょうかは。

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船底パーツを接着せずにおけばこの通りウォーターライン状態でも展示が可能です。

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その際余った船底はこのよーにしてサボ島沖で沈没着底してる状況を再現。旧日本海軍の戦艦12隻で敵戦艦と撃ち合って沈んだのはこの霧島だけなんである。はじめて海底の霧島を映像で見たときはあんまり綺麗に転覆してたんで泣きましたねえ。全然ディティールみれないじゃないかと(´Д⊂ヽ

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台座に乗せてみるとそれなりに見栄えのするものです。本来動かして楽しむことを目的に設計された30cmシリーズに、ある時期から台座が付属したってことはそれだけ動かす人が減ったってことなのだろうな…。しかし、

*手の届かない広い場所や波のあるところは不向きです。また、風呂は波が高く水没の可能性あり。

 いずれも水の事故に細心の注意をしましょう、させましょう。

どこで遊べというのだヽ(`Д´)ノウワァァァン!! なことが説明書にも明記されているんで、動かす人が減るのも仕方が無い事です。

ところで「風呂は波が高く水没の可能性あり」って相当センスオブワンダーな日本語だと思います。

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