文林堂「E.E./BACライトニング」

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ロンドンオリンピック開催記念で本日はゴーカ二本立てであります。そんなの関係ねぇ!と思われた方、正解です。「言うだけならタダだろう」と思うのは甘い考えで、世の中いろいろ権利とお金が介在してゴニョゴニョ…

そんな夢の無いハナシは場外に放り出して世界の傑作機No.80、ちょっと前の本ですけれどイギリス国産超音速ジェット戦闘機ライトニングに関する日本語資料としてはこれがピカイチだと思います。

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1950年代にマッハ2クラスの迎撃戦闘機として設計された本機の開発と発展、機体バリエーションや搭載兵装などについて余すところなく記述された一冊です。カラー/モノクロの写真も多く掲載され、他に類を見ない独特の魅力にあふれるシルエットを全方位から鑑賞可能。

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冷戦時代にソ連の爆撃編隊を仮想敵と目して作られた戦闘機ですが、皮肉にも最大の敵は国防予算の減額でした。(よくある話だ)また同時期の西側戦闘機にしばしば見られる「ミサイル万能論」によって機銃を撤去され、やはり必要性が叫ばれ再装備という、ちょっとしたドタバタにも巻き込まれます。

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西ドイツに前進配備された機体はダークグリーン主体の迷彩塗装が施され、本国仕様のメタリックな機体とはまた違った魅力です。同時代のライバルとしてはMiG-21やF-104スターファイターが挙げられるでしょうか、幸いライトニングは実戦を戦うことは無かったのですが輸出市場ではそれらライバルに完敗でした…。

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「その航空機の本質に迫ろうと読み物の構成に重点を置いてみました」と巻末編集後記にあるように文字記事は読み応えのある内容となっています。機体開発史や運用面での解説をはじめとしてどれも面白いのですが、とりわけ実際に本機に搭乗していた元RAFパイロットIan Brack氏による練習機型T.Mk5の操縦インプレッションは英国人らしいユーモアとウイットに満ちていて面白い。同氏がライトニングに登場したのは運用時期も末期の時代であったので「古い電池みたいに緑色のサビが出ていたら、多分そのスイッチはオフのままにしておいた方がいいだろう」などと、生々しい実態も垣間見えます(w

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どことなくユーモラスな印象を受ける外観ですが、まだジェットエンジンの出力が限られていた時代、二基のロールスロイス・エイボンとリヒター(何故かイギリス以外の全世界では「アフターバーナー」と呼称される装置)を極限まで切り詰めたボディに収めた本機の正体が、補機も燃料も人間さえも全てついでのように機体外面にへばり付いている獰猛なインターセプターだということはこの一冊を読めば明らかです。

いやあ、航空自衛隊のF-X選定にライトニングが選ばれたと聞いたときは、思わず紅茶で乾杯したくなりましたねぇ(`・ω・´)

ねーよ(´・ω・`)

ちなみにトランペッターのキットにデカールが入ってる該当機体2機のマーキングは本書でバッチリ解説されてます。トラペの中の人もきっとこの本読んだんだろうな。

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