陸上自衛隊広報センターの10式戦車

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先日搬入されて話題となった10式戦車(試作車)を見て来ました。すでに多くのメディアで紹介されて来た車両ですが、やはり直接見てみたくなり…

今月のAM誌にも記事が載っているのですけれど、そちらが巻頭1Pだけで淡泊な扱いだったのでついムラムラと炎天下に強行してきたのはヒミツだ(笑)

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展示場所は皆さんご存じ通称「りっくんランド」の広報センターです。朝霞駐屯地内の立地で交通の便としては国道254号(川越街道)沿い、電車を利用する場合の最寄り駅は東武鉄道/東京メトロの和光市駅から徒歩20分。この季節に訪れるならば帽子は必須と思われ。都心の池袋から電車で30分と掛らないところにあるのは素晴らしいのですけれど、池袋と埼玉県のこの辺りを結ぶ鉄道はいろいろあり過ぎて何度かよってもヨクワカラナイ…

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模型雑誌での扱いが若干低くならざるを得ないのは既に量産型も部隊配備され始めた10式戦車がこの先模型化されるにしても、試作車両の情報にはさほど価値を置かないからとその辺察しますれど、そんな事とは無関係にとにかく楽しくてしょうがないのでウォークアラウンドでバシバシ撮影してまいります。最新鋭の車両を手の届く距離で好きなだけ見放題って夢じゃないかしら。

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製造銘板によると本車は試作一号車のようです。車体番号は消えてましたが99-0237号車、以前は富士学校で展示公開されていた個体ですね。今年は富士駐屯地祭に教導団の量産型が走行展示やって、豪雨の中で機動するとゆーエラくカッチョイイ光景が繰り広げられた…らしい。

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富士学校の部隊マークが描かれています。この箇所も含めて展示にあたっては(屋外で長期保存するために?)再塗装が行われたとのことで、部隊配備当時と細部は異なるのかもしれませんが…

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一応の参考として、この車体の迷彩塗装の塗り分けは刷毛塗りで境界線もくっきりしたものです。プラモなら筆塗りでいけそう。

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車体各部のカメラやレーザー発振/受光部などはすべてシールで目張りされていました。

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車体左前方のみにある監視カメラにもシール貼り。量産型ではオミットされた装備ですね。

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ラインメタル製120ミリ砲とはまったく異なる国産120ミリ戦車砲の小さなエバキュエーター部分。発表当初砲身口径の数字「だけ」をみて90式戦車と同じ砲威力だと早合点した人には小一時間ほど見て頂きたい画像である。

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試作車では砲口左側に位置するボアサイトミラー。ミラー自体は正方形でってスンマセンこの画像後方の立ち木にピントがあってますねOTL

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屋外展示場の車両ではこの10式だけ立ち入り禁止の規制チェーンに囲まれているのですが、それでも普段雑誌等では見られない箇所を至近距離で見ることができます。これは車体後部下端の小扉類(?)さて何の機能があるんだろう。

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排気口グリルは一部塗料が変質していました。チッピング表現の参考にドゾー

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車体側面装甲板の最後端には何やらフラップ状の非金属素材が使われてました。

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裏側はこうなってます。排気口が間近なこともあり何やら難燃素材のように見えますね。排気口レイアウトや側面装甲板のカットラインが同一形状の90式には備わってないもので、何らかの新機軸…たぶん排熱ステルス的なものではないか…と何の証拠もなく勝手に推測。この部分を知れたことが今回一番の収穫かな。細か過ぎ(w

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砲塔バスルの影に隠れて見えない部分にもディティールがテンコ盛りです。ボルト結合ってことは外れるパネルなのかこれ。

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普通に目に見える範囲でも細やかなパーツがぞろぞろ備わってまして、ヨンパチはともかく1/35でプラモ作ったら大変なシロモノになりそう。

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車体前縁の牽引フック基部にまでこんなスナップピンが留められているのを見た日には正気で居られません。「製品化されても省略されるだろうし自分には再現出来そうもないけれど、必ず誰かがディティールアップしてくるポイント」ってくそっ、見に来なけりゃよかった(本末転倒)

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ライトガードはシンプルなつくりで、タミヤならプラパーツで出来そうだな。ライト類の配線はカバーされてます。

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車体前方左右にあるパイプは公道走行時にサイドミラーを取り付けるための基部。法令遵守。

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車体前部では複合装甲セルを挿入したと思しきパネルラインが見て取れます。「軍事研究」あたりの記事を待った方がいいのでしょうが10式戦車の車体部分、最前縁は空間装甲だったりするのかな?

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前照灯は車体外装を切り欠いて装備されていますし、量産型では前縁中央部に前下方監視カメラが付きましたしで、どうも装甲構造の上に一枚のカバーでウエッジシェイプされた形状を作りだしてるように見えます。

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(この画像はカマド「戦後の日本戦車」よりの引用)

試験中の画像を見ると車体前縁垂直に切り立っていて前照灯も露出しています。この垂直面に楔形の金属板を装着しているようですが、これまでにない処理でどんな理由からなのか実に興味深い。90式ではバラキューダと同じ材質の布カバーでたしか暗視装置対策も果たしていた筈ですが、それは無いんだよな…

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また広報センター本館の2階に上がると車体・砲塔の上面を見ることができます。これも出版物などではあまり見かけない構図でラッキー。

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砲手ハッチは前後にヒンジがあることからわかるように2分割されて観音開きで開きます。その際大小二枚の扉の前後関係が試作車と量産型では逆になっているのが興味深い(よーくみるとうっすら分割線が見えますが、試作車では前扉が大きくなってます。量産型は後ろ)。前扉部分にあるコの字状のパーツは何の役目を果たすんだろうか。他のフック関連よりも明らかに幅広で、機能が異なる様子。

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試作1・2号車特有の車長ハッチ形状。

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砲塔全体を俯瞰。脚立持ち込んだらいろいろ接写も出来そうですが、さすがに一般見学者がそれやったら怒られそう(^^;

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広報センターで公開された日付は6/30、それから約2週間たったほどでも既にキャラピラ接地部分にはサビが浮いてました。生きている状態だと色々違ってくるんでしょうけれど、それでもフリウルのメタルキャタピラ作るときは連結部分でサビサビさせて良いみたいだぞ。

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90式と比較されることが多い10式戦車ですが、ここでは74式と並んでいます。巷間囁かれているように本州以南の部隊で74式の後継として配備するなら比べるのはこっちなのかも知れないけれど、実際どうなんでしょ?いまはまだ各種学校に配備されてる段階だけれど、実践部隊ではどこが最初になるんだろうか。結局北海道の第2戦車連隊だったり…はないのか。あそこは90式で充足させるのか(うぃきぺでぃあなう)

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以前10式の展示位置に置かれていた74式105ミリ自走榴弾砲は向かい側に移動していました。いやー撤去されたかと思って心配したよ…

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その隣には75式155ミリ自走榴弾砲が並んでいます。同時期の自走砲2種を比較すると共通する点が多いのは当然として、むしろいろんなところに小松と三菱両者の設計思想の違いなどがほのみえて面白いところ。

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最近展示に加わった新顔の「中距離多目的誘導弾」。96式多目的誘導弾システム(通称:96マルチ)が高価で重厚な装置になったための一種の廉価版、いやそうではないんだが…の装置で愛称は「中多」、たぶんショタキャラ…

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2連装のランチャーを3基クラスター化で車載してます。説明パネルによると地上に設置しても使えるらしいのですが重いよなコレ…。しかし陸上自衛隊の普通科って誘導弾装備増えましたね。ひと昔前は60式自走無反動砲が現役だったのが信じられない進歩だ。

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一部の車両には隊員の方が乗り降りした靴跡が残っていました。さあ1/35スケールでスタンプ作る作業を始めるんだ。

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74式戦車の砲塔側面に残る三点リーダー「…」みたいな痕跡を1/35で再現するには一体どうすれば!?(見えねーよ)

そんなこんなで10式以外にも山ほど楽しいポイントがある陸上自衛隊広報センター、最後にウェブサイトのリンクを貼っておきます。

http://www.mod.go.jp/gsdf/eae/prcenter/

わたしたちの税金がどのように使われているのかを周知させるための場所、なるべく多くの方に訪れてほしいものですね。以前広報施設に入場料を取ってみたらどうだなんて言い出す国会議員がいたことには驚きですが、幸い現在は入場無料に回帰しています。7/16~7/20までは休館ですが、以後の夏休みシーズンにはいろいろイベントも予定されているようなので、ちょっと変わったテーマパークのようなものと思えば家族連れでも楽しめるかな。

オマケ。

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併設されている売店で10式戦車納入の記念メダルをお土産に買ってきたんですけど、台紙は90式のものにスペックだけシールで変えたものでした。無駄に予算は使わないんだなーと、却って感心しましたね。やっぱ事業仕分けでいろいろあったんだろうなァ…

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