MENG「1/35 フランス軽戦車 ルノーFT17 鋳造砲塔」

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来年2014年は第一次世界大戦勃発から100年になる年です。そのため戦車模型の界隈では急速にWW1アイテムがリリースされる状況となっていて、MENGのルノーFTはそのひとつ。つい最近出たばっかりのように思えますけど、MENGの開発ペースがあんまり早いものですからいつのまにか周回遅れになったような気分だ・・・


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この戦車が戦車開発史上に於いてどれほど大きな意義を持つものか、知名度が高い割にはこれまで決して良い製品に恵まれたとはいえない存在なので本製品のリリースは喜ばしいところです。

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DパーツおよびEパーツは2枚ずつ封入されています。

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F・Gパーツはおおむね車内のインテリア関係。フルインテリアの製品コンセプトはTAKOMの1/16と同様なのですが、パーツ分割やコンパチ仕様などこちらのほうが一層細かな点がいくつか見られますね。

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製品名にも特記されている“鋳造砲塔”はランナーの順番では最後のJパーツにまとめられています。パーツの配置・構成を見れば溶接砲塔型やインテリア抜きでのリリースも可能なように配慮はされている模様(現在そのようなバリエーションの発売予定はありません)

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キャタピラは1リンクごとに一体化され切り出し済みのものが入ってます。

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デカールは冬戦争のフィンランド軍、第二次大戦時にドイツ軍が接収したものもふくめて合計四種のマーキング、必要最小限にツボを抑えたエッチングとサスペンション用の金属部品が付属します。

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パーツの分割やディティールのキレ具合などこれまでいくつも見てきたMENG製品と同様にグレードの高いものです。でも砲塔パーツのこの配置はこれまでに無いなにか、なんだろう……ギャグでやってるわけじゃないと思いますけどビックリさせられたことは確かだ。

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上部転輪パーツにスライド金型使って一発抜きしているのもこれまでにない処置。分けるところは分け、まとめるところはまとめる。分割のサジ加減が絶妙で設計者はおそらくご自身でも作られるひとなんでしょうね。

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誘導輪(ルノーFTは後輪駆動なので前部の大型車輪は誘導輪なのです)は鋼製/木製の2種入り。本来スチール製で設計されたけど資材不足で木製転輪使ったんだったかな?有名な戦車ですが実は細かいところはよく知らない(汗)モリナガ・ヨウ氏のAM連載「私家版戦車入門」の単行本化が待ち望まれます……

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弾薬ラックに37ミリ砲弾を一個一個差し込んでく設計見たときに変な笑い声が出たのはヒミツだ。まー全部が全部そうだってわけじゃないのですけれど。

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どこもかしこもリベットだらけの戦車なので、どうしても車体は箱組みになります。決して組み立てやすいプラモデルではありません。

取説の手順通りに漫然と組んでいくとどうも上手く行きそうに無いので、今回はやりやすいように順番変えています。あくまで自分の、感覚的なものなので、果たしてこのブログ記事どおりに組んで万人が上手く組めるかどうかはなんとも言えません。

…結果として、実はあまり上手く行かなかったりする

えっ

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まずはその、車体部分のパーツを切り出しちゃいます。左右の装甲板パーツA7とA10は接着ラインにゲートが掛かっているのでここの処理は丁寧に。製作上の二手三手先を考え、仮組みしながら進めていくのがベストです。A10のほうがちょっと歪んでいたんだけれど、プラの材質は柔らかなものなのでそこはあまり問題にならなそう。

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操縦席の背もたれにあたるB30は車体の直角を出すためのフレームを兼任する重要なパーツです。ここも早いうちから組んですり合わせをしておきましょう。このパーツの差込部分、「ベロ」にあたる部分はかなりタイトなのでサンディング必須です。

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エンジン隔壁G12も同じく重要な部品で、やはりベロ部分は若干削りこみが必要です。デジタル作業で厳密に作図されながら、実際に組み立てる上では個々のパーツ配置に「遊び」が少ないような印象を受けますね。なおG12パーツの接着はエンジン関連組み込んだ後になりますので、この段階では仮組みのみにて。

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トランスミッションの組み立てには特に問題を感じなかったので、古い足踏みミシンのような味わいのあるカタチを存分にお楽しみください。

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ミッションの組み付けも左右装甲板との兼ね合いをよく見ながら進めます。

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エンジン本体も昔の灯油ストーブみたいで全体的に昭和の小学校みたいな雰囲気のマシンだなあ。このパートではG26パーツの接着面積が狭いこととG23とF16パーツの取り付けがタイトな点に注意。

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ラジエーターはファンベルトもプラパーツで再現、完成するとまったく見えませんがファン本体まで存在します。完成するとまったく見えませんが作業しながら「物のしくみ」がわかるのはなかなか楽しい時間の使い方で、インテリア再現モデルの楽しみ方について再考する思い。

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エンジン+ラジエーター。取説の手順に従えばこの状態でシャーシーに搭載しその後補機類を接着していくような指示なのですが、

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うっかりするとポッキリ折れそうなF4パーツの形状などを見ているとやはりシャーシーに搭載する前、さまざまな角度からエンジン部分にアプローチできるうちに接着しちゃった方が何かとよさそうです。

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エンジン関連、この辺まで取り付けてからシャーシーに乗せた方がよいでしょう。

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いろいろ細かな作業が要求されますが、なんといっても心臓部分ですから大事なところです。G30パーツがもげかかった状態に気づかず撮影しちゃったのは恥ずいな……

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この時点でエンジン隔壁を取り付けます。左右装甲板の取り付け具合はここでも見ておくべきですが、どうもこの段階でひとつ落とし穴があったらしい……

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左側の車体インテリア・車外装備品を取り付けます。四つのバリエーションから仕様を選択することになるので、それにあわせて加工を行ってください。今回はA/BのプトーSA18 37ミリ砲搭載型をチョイスしました。三段なる車体弾薬ラックは段列ごとに砲弾搭載の有無を選べますから、必ずしも満載にする必要は無いかも知れません。

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右サイドは比較的シンプルな構成です。ここに限らず押し出しピン跡はけっこうキツ目に残ってましたねー。

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金属製の挽き物とスプリング、プラパーツを組み合わせてサスペンションの作動を再現しているのはすごいですねさすがですね。車体に組み込んでからぴょこぴょこ動かしていると思わずこー、あくまでほめ言葉として、

「君たち馬鹿じゃねえの」とつい口に出る。

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OVMの固定ベルトはエッチング製なのですが、この部分もちょっと注意するべきです。取説手順では装甲板にあらかじめ台座となるD3、C18および19を取り付けてそのあとでベルトを通すような手順になってますが、おそらくまずD3だけ取り付けてベルトをくぐらせ、C18と19はベルトを差し込みながら車体に接着するようなやり方がいいんじゃないかな?シャベルとツルハシはあとから差し込めばオッケイと、文章で説明するよりは実際にパーツの形状・エッチングの取り付け位置を見てもらえば、その方が理解が早いかと思われます。

画像そのものは手順通りにやって上手く行かなかった例ですアッハイ……

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ここまで仮組みを繰り返してきた装甲板をようやく取り付け、なにか感慨に浸る……

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天井を取り付ければ車体側はほぼ完成です。

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しかし合わないんだこれが。

激しく隙間が開いてしまいましたOTL

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燃料タンクF17パーツの取り付け位置が微妙なことに加えてどうもラジエーターと天板が干渉しているようです。あらかじめ設置の際に左右だけでなくここの合わせも見ておくべきだったと、そういうことなんですが……

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いまさら修正は効かない段階なので仕方なくチカラワザで強引に接着。あまりよい処置とは言えずに考えてみれば「メカニック・モデル」的に装甲板を取り外して内部を見せるような仕上げを志向してもよかったかも知れませんねーうーむ。

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サスペンションは上下双方の転輪がそれぞれボギーで独立懸架される独特のもの。戦車開発黎明期の試行錯誤が見られるような変わった形状です。

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大仰ながら実に凝った仕掛けを見せるサスペンションユニット。MENGのキットはこの部分にもスプリング使って作動ギミックを備えています。

しかしフランス軍初となるシュナイダー戦車以来、第一次大戦当時のフランス戦車開発はサスペンションにいろいろ尽力していますね。イギリスの菱形戦車には欠けた装備で、この時代にはフランスのほうがモータリゼーション一般は発達していたのでしょうか?

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なおこの部分にはルノー社の製造銘板があらかじめモールドされています、他のメーカーならデカールやエッチングで済ませそうなものですが。視力にもよりますが肉眼では全然判別出来ませんでした。あくまでほめ言葉として「君たち(ry

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車体後部の尾橇上は荷物ラックかそこにカバーをかけた常態かを選択できます。後者のほうがもちろん楽なんですが車体でヘマしたことも鑑みてここはがんばる。それになんだか出前の原付みたいで面白いですしコレ。最近あんまり見ないんだけどね出前の原付。

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サスペンションや尾橇を取り付けると結構な押し出しです。二人乗りということで九四式軽装甲車みたいなサイズかなーとなんとなく思っていたのですけれど、実際の車格的には九五式軽戦車ぐらいはあるのか。

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キャタピラは後に回して砲塔関連を組んでいきます。兵装はプトー37ミリ砲のほかホチキス(オチキス)Mle1914機関銃、レベルMle1931機関銃を選択可能。M31機関銃の立体化はかなり珍しいんじゃないでしようか?第二次世界大戦当時のフランス軍の代表的な車載機関銃でB1重戦車などに搭載されたほか、フランス降伏後はドイツ軍にも広く使用されました。どーでもいーがwikiのページをグーグルクロームで機械翻訳すると「フランソワ機関銃」なんて表記になるのは何故なんだぜ?

37ミリ砲弾の砲塔弾薬ラックは全部に砲弾乗せてなお余るほど余裕がありますが、なんとなく少し空けてみました。まー気持ちの問題で深い意味は無いよ。

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茶釜のような砲塔。実にキュートで到底戦闘兵器には思えませんねー。

「鉄板の鎧に身を固めて長い列を作って、ころがって来る格好は、僕らには、いかなる物よりも戦争の恐ろしさを具現化したものに見えた」

「西部戦線異状なし」の記述だけどAM誌2000年8月号の第一次大戦特集、モリナガ・ヨウ氏のイラストコラムより引用。実に良い内容だったのに世間じゃ全然売れなかったと言ういわくつきで……

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砲架自体は大架と小架の二重構造で砲身自体を左右にも振ることが可能です。機銃のように突き出しているのは照準器で全体的に第二次大戦当時の日本軍戦車みたい。逆だよ第二次大戦当時の日本軍戦車がフランスの一次大戦戦車みたいなんだよッ!(血涙)

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椅子の代わりに取り付けられる幅広のベルト。こんな装備を実装しているとは本キットを組むまで知りませんでした。何かと勉強になるプラモデルではあります。

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砲塔乗せるとやっぱりカワエエなあ……

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オチキス機銃は三脚に乗せて別途展示することが可能です。戦車本体をオチキス機銃で組んじゃうと三脚が無駄になるので、キット内容を隅々まで生かすならバリエーションCのフィンランド軍仕様は避けたほうがいいのかな?オチキスといえば保弾板が有名ですが、本キットには車載型のメタルリンクが付属します。6個もある弾薬箱は本来車体内部に積み込むためのものなんでしょうが、取り付け位置が良くわからないんだよな……

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キャタピラの取り付けは特になんの問題なくパチパチ組んで外れることも無かったなあ。あ、いくつかゲート跡残ってるピースがあったんでそこは処理しておいた方が無難でしょう。

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キャタピラ巻いたら完成です、いささか苦労はしましたが出来上がるとやっぱり良い気分。ああ、ちょっとワイン飲みたくなりますねボジョレヌーヴォーですかね時期的にはね。

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もう少し各パーツの取り付けに余裕があれば良かったのですけれど、無塗装でこうですから内部塗装やりながら組んでいくと結構な作業量でしょうねえ。

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後に続く様々な戦車の基礎を確立して、とりわけ日本戦車の開発には色濃く影響を与えたのが理解できます。これとビッカースの6t戦車を悪魔合体させるとハ号になるんだなあ。第一次大戦当時に三千両も作って時代遅れになったまま二次大戦のときまで使ってたのも、どこか日本戦車に近しいものを感じたりしますねえ。

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「思春期に士郎正宗の『ドミニオン』を読んだ人間はたいてい軽戦車好きになる」という法則を思い出させる、大変よいチョロ丸戦車でした。実車は簡単に作れて大量に配備できるのが売りな車両なので、本当はもすこし簡単に組み立てられる製品があるといいんですけどね。

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