応援したくなる模型メーカー“自国愛の塊”タラングス

▲ホビーリンクジャパンのカールさん(スヴェーデン出身)
日本の武道を愛するクールガイ!にしても筋肉すごすぎでしょ(笑)

プラスチックモデルメーカーも商売ですから、当然製品が売れた方が良いに決まってるんです。製品化するまでのコストだってバカにならないし。だからアイテム選択は慎重にってマーケットリサーチしたりというのが、だいたいどこのメーカーも頑張りどころだったりするんですよね。なるべく多くの方に望まれているアイテムをと…
そこで、聞きますけど「サーブ B17A」って知ってますか? 「サーブ」は知ってる方が多いと思いますが、B17Aは?
そのB17Aはスウェーデンが先の大戦中に作った急降下爆撃機。…なんですが、主だった戦果もなければ武勇伝みたいなのもない。戦争終了後はジェット時代到来の予感とともに全部エチオピアとかに売却してなかったことにしてる感すらあるマイナー機といっていい代物。
急降下爆撃機だから降下速度を調節するダイブブレーキという機能が必要となるんですが、この飛行機は脚柱カバーをそれにしちゃおうってことで、急降下中は脚出すというチャーミングな機体です。でも軽い逆ガルの主翼に長すぎず太すぎずの胴体をマッチングさせた機体は、なかなかバランスが良く美しい形状ですね。

▲これがB17A。マイナー機ながら結構かっこいい!
脚カバーの形状はご覧の通り。ね?キュートでしょ?

ここからが本題です。その「売れるかどうかわからない」飛行機を製品化しようって猛者がいるんです。それは「タラングス」というスウェーデンに本社を構えるメーカー。同社はこれまでもスウェーデン空軍機のキットを次々に製品化してきました。確かにスウェーデンはずっと自国で戦闘機を開発してきましたから、例えば西側の「F-4」とか「F104」とか使ってればデカール変えで対応できたでしょうがそうもいかない。なのでマイナー機となるとキット化は絶望的…だと思われていましたが、さすがはタラングス。自国愛に溢れるこのメーカーは「うち、スウェーデン空軍機は全部やったりますねん。そう思とりますねん」という勢いで、ついに(?)B17Aを、しかも1/48という結構なボリュームのキットを製品化しちゃったんですよね。その勢いと自国機愛には本当に賞賛を送りたい!

▲タラングスをもっと知りたくなってきた! という方には「スケールアヴィェーション 2019 7月号」がオススメです。タラングスってどんな会社?なんてことも掲載。もちろん他にもスウェーデン空軍のことを知ることができます。ワタクシも、スウェーデン空軍の特徴である「岩盤掘って秘密基地バンカー」の情景(撮影用)を作ってます
▲主翼と胴体の接合部分は胴体からステーを出し、主翼を刺すことで組み合わせる方式となっていますので、スペシャルホビーのように「イモ付け」ではないので作りやすく強度も出るので安心です。またデカールの発色が綺麗で、ニス部分(余白)も少ないです。
※イモ付け:特にピンやダボがなく面同士を接着剤のみで留める方法
▲エンジンはA型というんだからスウェーデン製のはず。だけどキットにはA型とは逆回転のプロペラ(A型とイギリス製エンジンのB型では回転方向が逆)も付属してます
▲ディテールは、1/48スケールということを考えると、少しもの足りない感じもありますが、納得できるレベルにはあります。多分しっかり塗り分けるだけで見違える仕上がりになると思います
▲機体表面のスジボリは太さや深さが均等で、実に上質な仕上がり。ちゃんと動翼の部分だけスジボリが太くなってるね。ちなみにこのキットがB17で初かというとそうではないんです。ポーランドの「マリボックス」という、なぜかスウェーデン機ばかり製品化している謎のメーカーが1/72スケールで発売してます。あまり見かけませんけどね、たま〜に超絶な作品を展示会とかで見ますが、キットはちょっと厳しめなので、タラングスの方がベストと言えるでしょう

信念みたいなものがあって、その信念が時に商売の域を超えてしまっているのでは?なんていらぬ心配したり。でもそういうメーカーは応援したくなりますよね(ワタクシ達ユーザーも当たり前のものばかりじゃ飽きちゃうしね)これからも頑張れタラングス!



1/48 サーブ B17A 急降下爆撃機 Tarangus
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スケール アヴィエーション Vol.128 大日本絵画

元戦車模型専門誌「月刊アーマーモデリング」誌編集長にして、現在は月刊モデルグラフィックス誌などで活躍する模型誌モデラー。戦車模型への愛と知識もさることながら、陸海空スケールキットからキャラクターモデルに到るまで全てのジャンルに精通。約1000個のキットストックを持つ生粋の模型好き。

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