ハセガワ「1/72 M-1エイブラムス(SP41)」

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さて今回も蔵出し発掘品のシリーズとなります。ハセガワ72エイブラムスといえばミニタンクシリーズで現行品としてラインナップされておりますが、今回取り上げるのはデカール替えのスペシャル版、1991年2月の日付が入ってますから湾岸戦争真っ盛りの時期に開発販売されてた製品となります。もう20年以上前の話でハコがひしゃげて見えるのはそれだけ時代の重さを積んできたからなのです…

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キットはMT33の成形色をサンドカラーに変更しデカールを追加したものです。パーツ自体は特に変更が無いのでいちおう今回の記事をMT33のレビューとすることも可能ではあります。

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オリジナルは1986年の製品なので、さすがに昨今のミニスケールアイテムと比較すれば多少の古めかしさは否めません。72のエイブラムスなら現在ではドラゴンやトランペッターなど複数のメーカーから様々なバリエーションで発売されておりますし、現在ことさらにこれを選ぶ方も多くは無かろうと考えます。

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しかしハセガワ72エイブラムスは早くに発売されただけに配備当初の105ミリ砲を装備した初期型M1を再現しています。他のメーカーはどこも大抵120ミリ砲を装備したM1A1以降の形式なので、いまではかなり珍しい。1/35でも今は無印M1出てないんじゃないかな?タミヤのは金型改修で絶版ですしねえ。

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これは撮影失敗…うっかり違うデータを消しちゃったと…全部終わってから気がついて…

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デカールは2枚入りで従来のMT版で入ってたシートも付属します。下にあるのがSP版でのスペシャルデカール、所属小隊を示すシェブロンが中心でこの1枚でSP41、42の2種に対応しています。余談ですがSP42M-1A1エイブラムスの元になった(と思われる)MT35「M1E1エイブラムス」は120ミリ砲を搭載し複合装甲の試験を行った非常に珍しい車体を立体化していて、こちらは本当にハセガワのこのキット一種でしか製品化されてません。外付けバランスウェイトがパーツに入ってる、実に希少な存在です。希少がすなわち貴重であるかは、それはまあ相対的な話なんですけど。

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転輪パーツはサスペンションアーム部分でつながる一体化されたもの。このサイズならこれでも十分な組み立て易さなのですが、一部連結式のキャタピラが前後の誘導輪・起動輪への巻きつけを一枚板に「裏から切り込みを入れて手で曲げろ」との加工指示が出ていたのにはビックリ。

えっΣ(゚д゚lll)

いや~、実車がダブルピン連結なんで1ピースごとに別体化しても不自然ってのはわかるのですが、手曲げすれば当然連結部分も曲がる訳で。切り込みの入れ方によってはうっかり切断って自体も招きかねない恐るべきクオリティです。さすが「パーフェクトガンダムの脚部はバルサを削り出して作れ!」などと小学生相手でも全く遠慮のなかった80年代模型シーンです…

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砲塔部分の組み立てに関してはなんの問題もありません。多少はパテを使いましたがんなこたーごく普通の処置であります。

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キャタピラを巻きつける関係から起動輪はひとつも歯がないツルペタ状態です、実に漢(ヲトコ)らしい処理で設計担当の方はきっとユル・ブリンナーのファンだったのでしょう。

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前後ともかなり強引に巻きつけましたがこれでは全然曲げ足りません。キャタピラ上面と自然に連結させるにはもっともっと曲げなければ届きません。

が、

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どうせ見えなくなるのでそもそも連結させる必要がありません。上部転輪を付ける必要すらなかった…

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なにかとツッコミどころには事欠かないキットなのですが、砲塔乗せてしまえばカクカクしたキャタピラ部分もさほど気になりませんし、初期型M1の姿を現在につたえる稀有な存在として一定の評価はされてよいものでしょう。

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導入当初は燃費の悪いガスタービンやいまひとつ信頼性の不明瞭な複合装甲に疑念を抱く向きも多少はありました。1991年の湾岸戦争でも直前までも「ホントに役に立つんだろうか」と陰口叩かれてたモンですはい。

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付属のフィギュアは下半身までしっかり造型されてちゃんと自立します。ですが乗車させるためにはその下半身をブッタ切る必要がありまして…せっかくだから非常に出来の良い人差し指を強調したポーズに変えてみる。「強いアメリカ」を象徴する80年代的な存在と言えばハルク・ホーガンですよ!

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1991年の湾岸戦争、2003年のイラク戦争を経た今ではエイブラムス戦車の優秀性を疑う人もいないでしょう。着々と改良発展を重ねてM1A3の登場も囁かれる昨今ですが、その原点にあった姿はこのようなものでした。

ほんで連休を利用してささっと塗装までやってみました。キットの指定では第24機械化歩兵師団所属のM1となっていて、確かに第24師団はM1エイブラムスを以て「砂漠の盾」作戦でサウジアラビアに派兵されました。然しながら地上戦開始までに現地で改修を受け、「砂漠の剣」作戦時には第24師団の所属車両はすべて120ミリ砲・劣化ウラン装甲を完備したM1A1へとアップグレードされています。訓練中を想定すれば105ミリ砲のままこのマーキングでも可とすべきでしょうが…

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結局MT版のデカールを使って量産第一号車を作ってしまいました。

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“THUNDERBOLT”のニックネームと雷雲のイラストは本車の開発に尽力し完成目前に亡くなったクレイトン・エイブラムス大将が第二次世界大戦当時現役の戦車将校として前線勤務の際に愛車に付けていたものが踏襲されています。エイブラムス中佐(当時)はパットン配下の最も優れた戦車指揮官としてヨーロッパ戦線で様々に活躍し「アラクールの戦い」や「バルジの戦い」などにその名を残しています

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OD一色のエイブラムスも却って新鮮、なにやら温故知新な雰囲気なのです。サンダーボルトの子孫たちが21世紀にサンダーランをやったのも、それも奇縁と言うべきなのかな…

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