けんたろう所長のプラスチックモデルラボラトリー「タイヤのパーティングライン処理」
台風19号で被害を受けた皆様にお見舞い申し上げます。実際に自分も川の近くに住んでいるので、近傍の観測ポストの水位がどんどん上昇していくのを見ながら、荷物をまとめていつ避難するかという状況になるか待機するしかなく、待機中はプラモデルを組む余裕すらありませんでした。結果何事もなく済んだのですが、家から100mのところでは冠水もあり、自分はただただ運がよかっただけでした。同じ町でも床上浸水の起きた場所もあり、被災の痕跡や様子を見ると何とも言えない気持ちになります。皆様もおそらく毎日復興に頑張っていると思います。疲れないよう、自分のできるペースで歩んでください。
今回チーム・ハースのF1レーサー、ロマン・グロージャン選手が、キャンセルされた土曜には何をする?と聞かれ「タミヤのプラモデルを作るんだ」と答え、実際にタイレル6輪車のプラモデルを組んでいました。かつてこのマシンを駆ったジョディ・シェクターから「うちの実物見に来るか?」とレスが飛んできたり、気晴らしにボウリングに興じたり、グロージャン流の飄々としたプラモデルづくりはエピソードに事欠きませんでした。グロージャンは日本に来ればウォシュレットつきトイレの写真を撮って「このボタンを押すには勇気がいる……」とかコメントしたり、銀座に来てすき家(ここポイント)に入り「郷に入っては郷に従えだな(意訳)」と牛丼の並盛におろしポン酢を頼んだり、新幹線の移動は自由席だったり、名古屋駅ではおやつにトッポを食べてたり、なぜか1upキノコが胸にデカデカ印刷されたシャツを着ていたり(ちなみに今年のタイレル6輪の完成時に着ていたシャツもなかなか洒脱ですね)、ああ語ること尽きぬ愛すべきF1パイロットなのです……(撮影は彼のデビューイヤー、2009年の日本グランプリ。)
さて私もF1プラモデルは大好きです。バラバラになったウイングやエンジンの部品を触ることで、知られざるF1のテクノロジーに近づいた気になれるところ。美しいグラフィックがデカールなどに分解されていることなど、好きなポイントを挙げると枚挙に暇がありません。ただしガチで戦おうとするとF1マシンはとっても大変です。だから完成品はほとんどない……けど、なにか触っているのだけでも楽しいんですよ。”グロジャン式”F1プラモデルの味わい方も今度やってみたいと思います。
ようやく今回の本題です。F1プラモデルを作るうえで一番楽しいと私が思っている作業の話。それが今回紹介するタイヤの皮むきです。F1プラモデルのタイヤは基本的にゴム製で、中央にパーティングラインが走っています。もちろんこのままでも新品タイヤ同様ですからなんの問題もありませんが、ひと手間加えたパーツのよさもなかなかです。
オープンホイールだからこそ、タイヤの皮むきが見せられるし楽しめる。完成品にひと味添えるタイヤの皮むき、おすすめです。ではまた来週〜!
今回紹介したキットはこちら!
けんたろう/模型総合誌、月刊ホビージャパンや月刊モデルグラフィックスで絶賛活躍中。模型の腕前も確かながら「作品を残す作家タイプ」というよりも「模型を作る楽しさを探求し、発信するタイプ」のプロモデラー。